傷病手当金を解説!
今年の1月から社会保険労務士試験の勉強を始めるまで、私は「傷病手当金」なんてモノの存在を知りませんでした。
何となく仕事中に怪我をしたとすれば「労災」が適用されるという話しは聞いたコトはありましたが、例えばインフルエンザで1週間も仕事を休んだとしたなら「会社や同僚に申し訳ない」という気持ちはあっても、「給料を保障して欲しい」なんて感覚は全くなかったですし、保障してくれる制度があるなんて知る由もありませんでした。
恐らく多くの勤め人の方々が、私と同じような感覚なのだとは思うのですが、最近は法律を勉強したこともあってか「その感覚」が正しくはないのではないか?やはり自身の権利は主張すべきなのではないか?という風に私自身の考えも変わって来た気がしています。
そして今年、「傷病手当金」を勉強する機会があったコトで、偶然にも「派遣社員として働く私の妻が1週間ほど入院した際」また「私がうつ病となって契約社員の契約を更新しなかった際」この2つのシーンで「傷病手当金」の申請をする機会があったのです。
今回の記事は、会社勤めをしている方であれば助けてくれるときが来るかも知れない「傷病手当金」について、私の経験や勉強で得た知識をベースに基本的な概要や支給対象者、申請方法、注意点などの解説をしていこうと思います。
最後までお読みいただければ、皆様が「いざ」というときに、この記事が知識として活かせるようになるかも知れません。
そんな期待を胸に、可能な限り分かりやすく事例を交えながら説明していければと考えておりますので、お付き合い頂ければ幸いです。
なお、私の場合は初めての方でも分かるように端的に記述してまいりますので、万が一、誤解を招く表現があるかも知れませんし、言葉足らずな部分もあると思います。
確実な表現等で理解を進めたい方は「全国健康保険協会のHPリンク」を貼っておきますので、ご一読いただけますよう宜しくお願い致します。
病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
- 傷病手当金を解説!
- 傷病手当金の概要
- 傷病手当金の支給対象
- 傷病手当金の申請方法
- 傷病手当金を申請する際の注意点!
- 派遣社員である妻の実体験(仕事を休んだケース)
- 契約社員である私の実体験(仕事を辞めたケース)
- 最後に
傷病手当金の概要
まず「傷病手当金」というモノは、健康保険法という“法律”によって定められており、その条文が下記となります。
何だか難しい表現になっていますが、是非とも一読してみてください。何となくの制度はお分かり頂けるのではないでしょうか?
(1項)
被保険者(任意継続被保険者を除く)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。
(2項抜粋)
傷病手当金の額は、1日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額とする。
ものすごく大雑把に説明すると、会社勤めの人が病気や怪我で仕事を4日以上休んで無給なら、その仕事を休んでる間、給料の約67%を健康保険が保障しますよ!という感じの制度なのです。
大変ありがたいですよね?その割には知らない人が多くないですか?いやはや摩訶不思議な制度なのです。
ちなみに傷病手当金の支給は、最大で1年6ヶ月もの期間がその対象となるのです。
傷病手当金の支給対象
上記の「概要」でも何箇所か重要なキーワードが出てきているので、ここからは少しづつ詳細な点を説明してまいります。
まず「傷病手当金」は仕事を休んだからと言って、当然の如く誰もが申請して支給される訳ではありません。
最低限、以下の5条件は満たす必要があります。
①「健康保険の被保険者」であって「国民健康保険の被保険者でないコト」
傷病手当金は「会社等に勤めている人が対象」となり、自営業者や無職の方は対象となりません。
いわば「国民健康保険」に加入している方は対象外となり、いわゆる「会社の健康保険」と言われる「全国健康保険協会」や「健康保険組合」「共済組合」などに加入するサラリーマンなどを中心とした勤め人だけの制度となるのです。
②業務外の事由による病気や怪我の療養休業であること
基本的に「仕事が原因」の病気や怪我については「労災保険」が適用されて手厚い保障対象となるため「健康保険」は使えません。
時々、仕事で腰を痛めたからといって病院へ行く話しを聞いたりしますが、「仕事が原因」であれば本来、健康保険証は使えないのです。
すなわち、健康保険法で定められている「傷病手当金」も「仕事が原因」では使えないというコトになり、あくまで「健康保険証が使える病気や怪我」であるコトが必要です。
ちなみに、美容整形のような理由で休業しても、もちろん対象とはなりません。
③労務不能であること(現在の仕事に就けないこと)
正式な通達では「労務不能の認定基準は、必ずしも医学的基準によらず、本来の業務に堪えうる状態であるか否かを標準として社会通念に基づき認定する」また「現在は労務に服することが差し支えない者であっても、療養上その症状が休業を要する場合においては労務不能とみなす」となっています。
まぁ結局のところ、自分の主治医などに依頼して「医師等による労務不能の証明」が必要となります。
④継続4日以上の休みであること
この4日以上の意味は「継続(連続)した4日以上の休み」を指します。「休→休→休→出勤→休→休」みたいなコトでは駄目であって「継続4日以上」であるコトが必要です。
いわゆる失業保険(失業手当)を貰ったコトのある方だとイメージしやすいかも知れませんが、ハローワークに行った日から最初の7日間は「待機期間」と言って本当に失業しているか否かの確認の期間だと言われたのを覚えているのではないでしょうか?傷病手当金にも同じような考えがあって、最初の継続3日間は「待機期間」としてカウントされます。
本当に病気なのか否かを確認する期間と言われ、この3日間は傷病手当金は支給されません。
しかし、この待機期間の3日間は別に欠勤でなくても良く、土日祝日や有給扱いでも大丈夫なのです。とにかく会社に出勤しなければOKだというコトです。
⑤給与の支払いがないこと
基本的に、この制度は業務外の事由による病気や怪我で休業している期間の生活保障を行う制度となるため、給与が支払われていたり有給扱いの場合は支給されません。
但し、給与の支払いがあっても、その額が傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されることになります。
まとめ
まぁ長々と書きましたが、見出しを列記すると⬇️のとおりです。
①「健康保険の被保険者」であって「国民健康保険の被保険者でないコト」
②業務外の事由による病気や怪我の療養休業であること
③労務不能であること(現在の仕事に就けないこと)
④継続4日以上の休みであること
⑤給与の支払いがないこと
傷病手当金の申請方法
傷病手当金の申請は各保険者が独自で定めている書式を用いて申請しなければなりません。
「各保険者」とは、いわゆる皆さん各自が加入している健康保険の主体のコトで、基本的に多くの方が「全国健康保険協会」の健康保険に加入しているのではないでしょうか?
一部の大企業にお勤めの方は、自社の「健康保険組合」に加入していると思います。例えば「SONY」なら「ソニー健康保険組合」がありますし、「TOYOTA」なら「トヨタ自動車健康保険組合」だというコトです。
傷病手当金を申請するには、まず自分の健康保険の保険者を確認したうえで、その保険者のホームページにアクセスをして申請方法や書式等についての説明を熟読する必要があります。
自分が申請するために必要な書類や記入事項等を把握し、ホームページ等の記載に従って申請するようにしてください!
恐らく「医師の意見書(労務不能であることの証明等)」を書いて貰う必要があったり、事業主(会社等)に「出勤の有無や賃金の証明」などを依頼する必要がありますので、不明点等は遠慮なく自身の保険者に確認すれば良いでしょう。
傷病手当金を申請する際の注意点!
在職中に傷病手当金の支給を受けるのであれば、自身の保険者に対して2年の時効消滅内に支給申請すれば良いので特には問題ないかな?と思いますが、仕事を辞めた後も傷病手当金を貰うには「継続給付」と言って幾つか注意すべき点があります。
以下では、仕事を「休んだとき」と「辞めるとき」に大別して、申請の際の注意点などを解説してまいります!
仕事を「休んだとき」の傷病手当金
傷病手当金の時効は2年です。ですから2年以内であれば傷病手当金が申請できるということになります。
そんなにお金に困窮していないのであれば、ゆっくり申請手続きを進めて2年以内に申請しても何ら問題はありません。
また「休んだとき」の傷病手当金の申請については、前述した5つの条件さえ満たしていれば大丈夫な筈です。
条件を満たしていて請求さえすれば、必ず支給されるべきモノですから、支給対象に該当する方は何の躊躇いもなく支給申請しましょう!
これまで毎月、給料から高い健康保険料が天引きされて来たのですから、貰える権利は確実にきちんと行使して行きましょう!
「仕事を休んだとき」の申請は「事後的な申請」が多いでしょうから、休んだ期間(労務不能期間)も明確なので特に問題はないのでは?という感じです。単に申請するか否かというコトなのではないでしょうか?
傷病手当金は別に会社が自腹を切って保障してくれる訳ではなく、我々自身が積み立てた保険料から健康保険協会もしくは健康保険組合が支払ってくれるお金なのですから、気にすることはありません。
まずはご自身が、どの健康者なのかを確認して「全国健康保険協会」もしくは「〇〇健康保険組合」などのホームページにアクセスし、申請書を出力するなどして必要事項の記入や必要書類の手配などをドンドン進めて行くべきです!
仕事を「辞めるとき」の傷病手当金
私が申請したのが、この仕事を辞めたあとも継続して支給して貰う「継続給付」と呼ばれる傷病手当金となります。
「継続給付」というのは、在職中から傷病手当金の条件を満たしているのであれば、退職したとしても支給を継続してくれるという制度になります。
在職時から「支給を受けている」必要はなく「支給条件を満たしていれさえすれば良い」のです。
但し以下の3点は「継続給付」には欠かせない独自の絶対条件となるので要注意です!
1.退職日までに継続して1年以上は健康保険の被保険者であること。
すなわち入社1年未満の方が在職中に傷病手当金を貰っていたとしても、退職してしまうと傷病手当金は打ち切られることになります。
2.出勤日の最終日(退職日)は必ず休みを取ること。
そうでなければ「就労できないまま退職した」という扱いにはならず、継続給付はされません。この条件を知らずに退職をして不決定される人が意外と多いみたいです。要注意です!
3.退職後、ハローワークで失業の認定を受けないコト
というか、働けるのなら傷病手当金を貰う必要性がないというコトになります。不正受給は犯罪ですので絶対にダメです!
とにかく「失業給付」と「傷病手当金」は一緒には受けられないというコトになります。
派遣社員である妻の実体験(仕事を休んだケース)
派遣社員、勤務1ヶ月、全国健康保険協会
ある日「風邪かも?」というコトで仕事を休んだ妻。熱が38度ほどありました。
まだ派遣会社を変えて、新たな職場で派遣社員として働き始めてから1ヶ月ほどの出来事でした。
そのため有給休暇は全くありませんでしたし、派遣されて間もない立場だったので「休みたくない」という思いも強かったようでしたが、2回目の病院検査の結果、「喉頭蓋炎」というウィルス性の病気で命に関わる病気だと告げられ、近くの大学病院に緊急入院するコトとなってしまいました。
それで通算8日間の入院と5日間の自宅療養を強いられ、13日間もの無給生活となってしまったのです。
それで退院してから「全国健康保険協会」のホームページで申請書をダウンロードし、休んだ分の傷病手当金を申請することにしました。
書式に従って病院で証明書を書いて貰えるように、直接、病院の窓口に書類を持参してお願いに行くと作成に1週間程かかるとのことでした。
「傷病手当金」と言えば、直ぐに書類作成依頼の主旨は理解してくれましたから、傷病手当金を利用する人って実は多いみたいですね。知らなかったです…
そして現在勤務する会社に欠勤等の証明をお願いする必要もあったのですが、これは「会社に持って行きたくない」との妻の意見に従い、郵送で派遣会社の総務課宛に送りましたが、これも1週間ほどで返送されて来ました。
これで必要書類が揃ったので、保険者である「全国健康保険協会」へ書類を郵送したら、約1ヶ月ほどで「支給決定」の葉書が届いて数日後には無事に指定口座に傷病手当金が入金されました!
正社員だろうが契約社員だろうが派遣社員だろうが、みんな社員であって健康保険料を天引きされているコトに変わりはありません。
「有給消化」されるのが嫌なら、そう主張すれば良いでしょうし、「欠勤扱い」になるのであれば、それはそれでちゃんと傷病手当金を支給申請しましょう!
契約社員である私の実体験(仕事を辞めたケース)
契約社員、勤務2年9ヶ月、〇〇健康保険組合
さて、私の場合は既に他の記事などでも書いて来ましたが、今年のお盆休み9連休で勉強し過ぎて「うつ病」発症という事態に陥りました。
まぁ主治医曰くも、その前から兆候があったようですし、私自身も「何だか体調が優れない」という理由から3ヶ月毎に締結する契約更新を断ることにしていたのです。
ということで私の場合は、お盆休みという「会社が休み(公休)の間」に病院へ行って病気だと診断され、その間に待機期間も満たした訳です。
そして退職日までの数日は出勤しましたが、出勤最終日となる退職日だけは有給を使って休みを取りました。
これで「継続給付」の条件は満たしたことになる筈です!
とはいえ、既に2ヶ月以上も経過して、間もなく病気も治りそうな現段階においても「傷病手当金の支給決定」はされていません。
私の保険者となる健康保険組合に問い合わせの電話をしてみても「初回の認定には時間が必要なので…」なんて話しでした。
私の印象だと「全国健康保険協会」は形式にのっとって淡々と手続きを進めてくれるのですが、独自のルールで進める各社の「組合健康保険」は何かと面倒くさくて時間がかかる感じです。
きちんとした手続きに則って申請をしたにも関わらず、時間ばかりかかって、なかなか決定をしない私の保険者ではありますが、また近々クレームの電話を入れますので、何かイレギュラーな出来事があれば、何かしらのカタチでご報告させて頂こうと考えています。
最後に
ここまで長々と「傷病手当金」の解説等をしてまいりましたが、少しはご理解いただけましたでしょうか?
私としても、ここまでの長文と難しいテーマを記事にしたのは初めてだったので乱文になってしまったこと、大変申し訳ないと感じております。
ただ繰り返しにはなりますが、「傷病手当金」に関しては『自分が対象なのか否なのかを確認して、対象ならば必ず申請しましょう!』というコトを声を大にして言いたい!
基本的に自ら申請しなければ誰も教えてはくれませんし、助けてもくれません。この世は「無知は罪」なのです。
ですから、いつか「いざ」という時に「この記事」を思い出して、「誰か」役に立ててくれる人が1人でもいてくれたら嬉しく思います。
「誰かの役に立てれば」そう願いながら、今後も文章力・表現力を、チカラを身につけて「もっと素敵なブログ」にして行きたいと考えています。
この記事を最後までお読みくださり、本当にありがとうございました!
今後も可能な範囲で記事の更新をしてまいりますので、ご愛読いただければ幸いです。